この記事を読んでわかること
- 株(株式)は、企業が事業活動資金を調達するために発行する証書です。
- 売買差益で儲けても、持ち続けて配当金や株主優待で儲けても、もしくは両方で儲けることが可能。
- 唯一のリスクは値下がりリスク(倒産リスク含む)。
- 新NISA口座を活用すれば、売却益や配当に関係する税金が非課税となる。
泉田 良輔 CMA
1株とは?
ここからは株とは何かについて、定義からスタートして解説をしていきます。
株とは何か
株とは正式には「株式」といいます。
株式は、会社が事業活動のための資金調達を目的に発行する証書です。
一方、投資家は企業に事業活動資金を「出資する」代わりに株式を受け取ります。
投資家として株式を保有するということは、会社の所有者(オーナー)となる権利を手にすることを意味します。そして、株式を持つ人のことを「株主」と言います。
株主の権利と責任
株式の発行は企業が資金を集める手段の一つです。出資者は、株式の所有権を得て株主になることで、様々な権利を得ます。
たとえば、出資したお金を使って企業が儲け、その利益の一部を「配当」として還元してもらうことは、株主としての権利の一つです。
また、株主総会にオーナーとして参加して発言したり、経営者を選んだりする権利も得ます。
一方、株主は会社に出資した金額までの責任も負います。簡単に言えば仮に会社が倒産した場合、出資したお金は返ってきません。
しかし、会社の抱えた借金などにまで責任を負う必要はない、ということです。
なぜ企業は株式を発行するのか
企業の資金調達法は株式と借入(負債)
企業は事業活動資金を株式を発行し資金調達する他、銀行から借入(負債)などで賄っています。
では、企業が研究開発や設備投資などが必要で、大量の資金を必要とする場合を考えてみましょう。
その際、銀行からの借入にも限界がありますし、投資家一人ひとりに頼んで出資してもらうのも大変です。そこで、不特定多数の投資家からお金を集められれば効率的です。その際に、たくさんの投資家に会社のビジョンや事業の方針を説明し、出資してもらう場を求めて、企業は「上場」をめざすこともあります。
一般の投資家が売買できるのは上場株式
上場すると、自社の株式が証券取引所で取引、つまり売買されるようになります。証券取引所には「株を買いたい投資家」「株を売りたい投資家」が集まり、市場が作られています。
たとえば「東証一部」「マザーズ」などはそうした株式市場です。自社株をこれらの市場に上場させている企業のことを「上場企業」と言います。一般の投資家(個人投資家)が株式を買うことができるのは、こうした上場企業の株です。
株価決定のメカニズム
では、株式市場で売買される価格、すなわち株価はどのようにして決まるのでしょうか。
株は、売りたい人と買いたい人の金額と価格が一致すると売買が成立します。
買いたい人が多ければ「多少高くてもこの株が欲しい」という人が増えて株価は上がり、売りたい人が増えれば「多少安くてもいいから売ってしまいたい」人が増えるので株価は下がります。
こうした動きに影響を及ぼす要因の一つが「業績」です。企業の業績が悪化するなどして、利益が期待できなくなると、その会社の株を持つことの魅力が薄まるので、株を売りたい人が増え、株価が下がります。
逆に業績の良い企業の株は魅力が高まり、欲しがる人が増えるので、株価が上がっていきます。
そのほか、経済環境、新製品(撤退)、生産拡大(縮小)、増配(減配)なども株価を動かす要因となります。
2株式投資のメリットとデメリットは何か
株式投資は銀行預金などと異なり、積極的にお金を増やすための行動です。
株式投資の大きなメリットは「お金を増やしたい」という人が、自分で探し、自分で判断して選んだ銘柄で、お金を増やすチャンスを得られる点です。
一方で株式投資のデメリットはリスクがあることです。
ここでは、株式投資のメリットとデメリット、新NISAを活用するメリットについて解説します。
株式投資のメリットー売却益、配当金、株主優待
では、どういう行動で「株で儲ける」ことになるのでしょうか。ここでは3つの基本的な儲け方を見ていきます。
売買で儲ける(キャピタルゲイン)
もし投資した企業の事業が見込み通り成功すれば、「この企業の株が欲しい」という人が増えるはずです。
すると、その企業の株の需要が高まり、株価が上がると予測できますね。株価が買った時よりも高い時に売ると、差額を儲けとして手に入れることができます。これを売却利益(キャピタルゲイン)と呼びます。
株価が安い時に買い、高い時に売ることが株式売買で儲けるための基本動作といえるでしょう。
また、通常の証券口座で売買をするケースでは売却利益に税金がかかりますが、新NISA口座で売買したものについては税金がかかりません。これが新NISA口座を開設するメリットとなります。
配当金で儲ける(インカムゲイン)
株式会社は事業活動で得た儲けを出資者、すなわち株主に還元します。利益は、株主が持っている株式数に比例して「配当金」として分配されます。これがインカムゲインです。
配当金は「1株あたりXX円」というように、1株に対していくら出すかが決められます。配当金は会社によって異なりますが、株価に占める1株当たりの配当金の割合(配当利回り)が%に達するものもあります。
日本経済新聞社「マーケット情報」を見てみると、2024年12月現在、上場企業の配当利回りはおおよそ2%といったところです。こうしてみると、依然として銀行の預金金利と比べるとはるかに高いものが多いといえるでしょう。
また、通常の証券口座で株式を購入し、保有をするケースでは配当に税金がかかりますが、新NISA口座で保有するものについては税金がかかりません。これが新NISA口座を開設するメリットとなります。
株主優待で儲ける
さらに忘れてはいけないのが株主優待です。
優待内容は会社ごとに異なりますが、その会社の製品や商品券・割引券のほか、お米や食品などのこともあるようです。権利が確定する日に一定以上の株を保有していなければならないといった、制約はあるものの、個人で株投資をする人にとっては非常にお得な制度です。
投資に関係するリスクとは
ここからは株式投資に関係するリスクについて解説をしていきます。
株式投資の3つのリスク
株が持つリスクは大きく分けて以下の3つです。
- 【その1】値下がりリスク:株価が買った時よりも下がること。元本割れする可能性ともいえます。
- 【その2】倒産のリスク:会社が倒産すると株式価値はなくなります。
- 【その3】流動性リスク:すぐに換金できないというリスクです。【その1】に関連しますが、株式取引は、売りたい人と買いたい人の両方がいて成立します。そのため、自分が売りたい時に自分以外の買い手がいないと、すぐに売ってお金に換えることができません。上場株式でいえば、時価総額が小さく、一日の取引ボリュームが小さい銘柄が流動性のリスクがあるといえます。
会社が倒産すると株はどうなるのか
投資家にとって最悪のケースは企業の倒産です。株式が紙くず同然になってしまう可能性があります。
しかし、株主は出資した金額以上の責任を負いません。つまり、10万円の投資であれば、仮に倒産して株価が0円になったとしても、損失は10万円以上にはなりません。また、仮に株価が大きく下がったとしても、売却しなければ損は確定(現実化)しません。
信用取引での損失は投資した以上に損をすること
大損になるのは、えてして「信用取引」という取引で失敗したケースです。
ただし、信用取引は、かなりの上級者向けで、株式投資の初心者が不用意に手を出すものではありません。
そういう意味でも、通常の株式売買をしている限り、リスクは限定的といえるでしょう。
良い株、悪い株の見分け方
株式投資を始めるとき、誰もが「損をしたらどうしよう」と考えるものです。もちろん、損をするとわかっている株には手を出したくないですよね。では「良い株」と「悪い株」を見分ける方法はあるのでしょうか。
たとえば、業績の良い会社が「良い株」で業績の悪い会社が「悪い株」と言えるのでしょうか。
結論から言うと、必ずしもそうとは言い切れません。機関投資家を中心とした市場参加者が企業ごとに業績を予測しており、その予想を下に投資判断を行い、それらの行動の結果が株価に反映されて(織り込まれて)いると、その時点以上には上がらない(下がらない)場合もあるからです。
逆に、まだまだ伸びそうだと思った銘柄の株価がどんどん下がっていったり、逆にまだまだ業績は不振と思われた企業の株価が徐々に上がっていったりもします。
「良い株」「悪い株」を自分自身で判断できるように、実際に投資しながら少しずつ分析手法を勉強していくのが株式投資に慣れる近道です。ここでは2つの分析手法についてご紹介します。
ファンダメンタルズ分析
ファンダメンタルズ分析とは、成長性、財務健全性、競争優位や市場などを分析することです。経営成績や財務状態を元に将来どれだけの利益を企業が生み出すか分析する、ということです。
また、企業分析と同時に重要になってくることは、その企業に限らず業界の成長性も考慮にいれることです。
たとえば、最近よく聞かれるようになった外国人観光客の「爆買い」を例に見てみましょう。訪日観光客の増加により、宿泊(ホテルや旅館)、鉄道、小売り(特に百貨店)などの業界の各社業績に大きく寄与しました。そうした銘柄は株式市場でも「インバウンド銘柄」として、その動向が注目されるようになっています。このようにファンダメンタルズ分析は経済そのものをややマクロな視点で見る手法です。
テクニカル分析
テクニカル分析は過去の株価や出来高等の株式そのものの取引実績からパターンを予想しようとする手法です。
テクニカル分析は投資のタイミングを計ろうとする投資家にとってはとても興味のある分析手法です。
ただし、テクニカル分析で使用するデータはすべて過去のものなので、未来を正確に予想するものではありません。過去のパターンにはめるとどうかという視点で利用します。
3株はどうやって買うのか
ここからは株の買い方について解説をしていきます。
株の売買は証券会社を通して行う
株は株式市場において、証券会社を仲介して売買されます。証券会社は株の売り手と買い手の間に入り、証券取引所で売買を行います。つまり、私たちが株を買ったり、売ったりするためには、必ず証券会社を通さなくてはならないのです。必然的に、株式投資を始めるための第1ステップは「証券会社に証券口座を開設すること」になります。
ネット証券での口座開設がおすすめ
では、どのように証券会社を選び、証券口座を開けばいいのでしょうか。「わざわざ証券口座をつくるのに証券会社に出向くのも面倒だな」とか「あれこれ勧誘されるんじゃないの?」とか、少し億劫に感じるかもしれません。
そうした方におすすめなのがネット証券会社(オンライン証券)です。各証券会社によって手数料・口座開設料、取扱商品やサービスに違いがありますが、ネット証券は手数料・口座開設料が格安で、さらにインターネットから申し込めるため直接店舗に行く必要がありません。
4まとめ
株(株式)は、企業が事業活動資金を調達するために発行する証書です。企業に出資して株を持つと、誰でも会社のオーナーになれます。売買差益で儲けても、持ち続けて配当金や株主優待で儲けても、もしくは両方で儲けても、儲け方が自分で選べる点もメリットといえます。もちろんリスクはありますが見合うだけの価値は十分にあるといえます。株式投資をためらっているみなさんも、投資家デビューに一歩足を踏み出してみてはいかがでしょうか。
5参考資料
- 日本経済新聞社「マーケット情報」
泉田良輔