【図解】PBR(株価純資産倍率)を証券アナリストがわかりやすく解説!計算式、高いと安いの目安、PERとの違いを説明

【図解】PBR(株価純資産倍率)を証券アナリストがわかりやすく解説!計算式、高いと安いの目安、PERとの違いを説明
  1. TOP
  2. 証券口座
  3. 【図解】PBR(株価純資産倍率)を証券アナリストがわかりやすく解説!計算式、高いと安いの目安、PERとの違いを説明
株式投資で割高や割安を判定する際に使用する代表的な株価指標の一つであるPBR(株価純資産倍率、ピービーアールと発音)
 
PBRは株価指標としては一般的ですが、「PBRで1倍」を基準とした使い方がよく知られているだけで、機関投資家のようなプロ投資家が使用する方法は実はあまり知られていません。
 
ここでは、PBRの定義や計算式、またPBRを使っての割高や割安の使い方、PERとの違いについて、元機関投資家で日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)が解説します。
 

この記事を読んでわかること

  • PBRの定義
  • PBRの計算式
  • PBRで1倍を割れているからといって割安というわけではない
  • PBRが高くても成長率が高かったり、資産内容が良ければ割高というわけではない
  • PBRはストックの株価評価、PERはフローの株価評価の基準となる
  • 投資判断は、複数の株価評価を使って行いたい
izumida_r 執筆者

泉田 良輔 CMA

慶應義塾大学卒業後、日本生命やフィデリティ投信にて証券アナリストやポートフォリオマネージャーとして従事。2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現・株式会社モニクルリサーチ)を設立。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)

PBRとは何か【基礎知識編】

まずは、PBRの定義や計算式、調べ方などの基本的なことを押さえておきましょう。

PBRの定義

PBR(Price Book-value Ratio)とは、日本語では「株価純資産倍率」といいます。

株価に対して、一株当たりの純資産がどの程度なのかを表したものです。PBRは一般的に「倍」で表現されます。

純資産はざっくりいうと株主に帰属するお金です。純資産のほとんどが多くの場合株主資本です。企業が毎年利益(当期純利益)を出していると、配当を支払った分を除いて蓄積されて増えていきます。

PBRの計算式

PBRは以下の式によって算出することができます。株価をBPS(一株当たり純資産)で割ったり、また時価総額を純資産で割って求めます。

img_550_2

PBR = 株価 ÷ 一株あたり純資産(BPS)

あるいは

PBR=時価総額 ÷ 純資産

※BPS:Book-value Per Share

上場企業のA社の株価が2000円だとしましょう。その時にA社のBPS(一株当たり純資産額)が1000円だとしましょう。

その時のA社のPBRは以下のように計算できます。

A社のPBRの計算式:2000円÷1000円=2倍

PBRの計算事例ーダイキン工業を事例に

ここではダイキン工業の2024年3月期通期決算を事例にPBRを計算してみましょう。

ダイキン工業の2024年3月末の一株当たり純資産は9009円19銭です。ここではざっくりと9009円としましょう。

また、2024年3月末の株価の終値は2万600円となっています。

したがって、ダイキン工業の実績をもとにしたPBRは以下のように計算できます。

ダイキン工業のPBR:2万600円÷9009円=2.2866倍

ざっくり、2.3倍ということができます。

ダイキン工業のPBR:2万600円÷9009円=2.2866倍

出所:ダイキン工業株式会社「2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」を元にMeChoice編集部で作成

PBRのインターネットでの調べ方

では、実際にPBRはどのように調べればよいのでしょうか。決算短信や有価証券報告書といった決算資料から該当する数字を拾い、ここまで見てきたような方法で自分で算出することが可能です。

しかし、それはあまりにも面倒です。

実は、PBRは最もよく利用される株価指標の一つなので、Yahoo!ファイナンスやインターネット証券会社のウェブサイトなどから、無料で簡単に調べることができます。

2PBRの活用法【実践編】

では、実際に株に投資するにあたって、PBRをどのように活用すればよいのでしょうか。この章こでは、PBRの目安と注意点についてご説明します。

PBRの目安は1倍だが、注意点も多い

一般的に、PBRの目安は1倍とされています。PBRが1倍、すなわち株価と一株当たり純資産が等しいということです

PBR1倍の意味は、一般的には、投資家がいま買おうと思っている株価(投資金額)と会社を解散した際に株主に戻ってくる金額(解散価値)が等しいということを意味しています。

そうした理解もあり、PBRが1倍以上が割高、1倍未満が割安といわれることがあります。

しかし、PBRが1倍を下回っていたとしても、必ずしも買い判断となるかというと、決してそうではありません

以下、そうした注意点についても触れておきます。

PBRの1倍を使用する際の注意点ーバリュー・トラップに気をつけよう

会社の状況によっては、「PBR1倍未満は割安」といえるのですが、実際は会社が解散することによって投資した金額以上の金額が戻ってくることはほとんどないでしょう。

なぜならば、多くの会社は銀行などの金融機関から借入をして事業を行っていますし、解散時に借入を返済するために資産を売却こともありますが、その際には足元を見られて市場価格通りに売却できるわけではないからです。評価損を計上しながら売却するということもあるでしょう。そうしたことを考えると、単純にPBRが1倍だと割安とは言い切れません。

では、PBRが1倍を割っている銘柄はどのような銘柄なのでしょうか。

例えば、株式市場が「この会社は(利益を増やして)純資産を大きく積み増していくのは難しいだろう」「将来大きく赤字を生み出してしまい、純資産が減ってしまうだろう」などと考える場合は、PBRで1倍を大きく割り込むことがあります。

株式市場は常に将来を織り込んで動くのが特徴です。PBRの水準が低く、割安だと思っても、株価が上がりにくい状態が続くことを「バリュー・トラップ」といいます。

「割安な株を見つけた!きっとこれは自分しか知らないだろう」と思い、自信満々で株を保有し、楽しみに待っていても全然株価が上がらないということを経験した人も多いのではないでしょうか。それはきっとバリュー・トラップにはまっているのです。

加えて、株式市場が軟調な場合、つまり株式全般が買われにくい環境というのは必ずあります。その際には、PBR1倍割れの銘柄が多数出てきます。「PBR1倍割れの銘柄はすべて買い?!」という様な状況となり、さらに判断が難しくなってしまいます。

したがって、投資判断を行う上では、PBR1倍という「絶対値」での目安はもちつつも、株式市場との比較や同業種内・競合他社との比較、その会社の時系列での推移との比較といった「相対的な」基準も確認し、その会社が本当に今割安なのかを判断することが大事です。これがPBRの有効な活用法です。

PBRが1倍を下回る会社には投資すべきか

先ほど述べたとおり、一般的にPBRでの割高・割安の評価基準の目安は1倍であり、1倍を下回ると割安とされます。

しかし、低PBRだからといって、そのまま単純に投資するのは危険です。

PBRの分母である一株あたり純資産は、決算数値から取得される過去の既に確定した数値であり、よく使われるPBRには将来予想の視点は入っていません。

一方で、分子である株価には将来予想の視点が含まれています。

つまり、もしその会社に大きな経営不安や将来赤字が予想される場合、また資産がに不良債権などが含まれて実際はもっと少ないと考えられると株式市場が織り込んでいる場合等、株価には反映されるものの一株当たり純資産には反映されていません。その結果、低PBRとなる可能性があるのです。

そうした状況により低PBRであるのに、その倍率をみて単純に割安といえないのはお分かりいただけるでしょう。

そこで、業績や資産内容、将来予想に問題はないか、市場や同業他社、その会社の過去等の数値と比較して「相対的」に判断することが大事になってきます。

ただ、優良銘柄にも関わらず何らかの一時的な事象によってPBRが1倍割れをしており、将来収益が改善し、純資産を積み上げていく期待が大きいようであれば、そのPBRをもってして、その銘柄に「買い」の判断をするのはありです。

高PBR銘柄とはどのようなものか

では、高PBR銘柄とはどのようなものでしょうか。実は、過大評価されて割高なものばかりではありません。

例えば、今後の成長が期待され、純資産が急激に増加することが予想されている会社や資産内容が良く含み益のある会社などは、高PBRであっても割高で投資対象として好ましくないとは言い切れないものもあります。いわゆる成長株や資産株と言われるものです。一概に高PBRが割高で投資対象として望ましくないとは言い切れないのです。

ただし、PBRで4倍や5倍というように、1倍から大きくかい離している場合の扱いは投資のプロでも難しいものです。投資のプロは決してPBRだけで判断せず、ROE(株主資本利益率)、PER(株価収益率)など、複数の指標をみて判断しています

 

3PERとの違いとは

株価の割高や割安を判断するのに、PBRとは別によく使われる株価評価の指標としてPER(株価収益率)があります。

ここまで見てきたように、PBRは純資産(株主資本がほとんど)を基準とした倍率であったのに対して、PERは当期純利益(最終利益ともよばれる、税金支払い後の利益)を基準とした倍率です。

このように、PBRは純資産という一時点での利益を積み重ねた数字を基準としているので「ストック」をベースにした指標といえ、PERは利益という一定期間(通常1年)で区切った収益の流れを基準としているので「フロー」をベースにした指標といえます。

したがって、PBRとPERは別物を対象に評価する基準だと理解してください。

4まとめ

このように、PBRは最もよく使われる重要な株価指標の一つです。また、PBRで1倍を割れていたからといって必ずしも割安とは言えません。

PBRは純資産というストック面から判断する尺度であり、PERとは異なります。

投資判断をする際は、PBRだけではなく、PERなどの別の株価評価の指標をいくつかを見た上で総合的に判断するようにしましょう。

5参考資料