この記事を読んでわかること
- PER(株価収益率)について
- PBR(株価純資産倍率)について
泉田 良輔 CMA
1PERとはなにか【基礎知識編】
PERの意味や計算方法など、基本的なことを押さえておきましょう。
PERとは
PER(Price Earnings Ratio) とは、日本語では『株価収益率』といいます。あまり株価収益率という人は少なく、一般的には「ピーイーアール」と読んで使われます。
PERの意味は、株価が一株あたりの当期純利益の何倍かを表したものです。当期純利益とは、最終利益ともよばれ、税金を支払った後の株主が自由にできる利益のことです。一般的には、当期純利益の中から株主への配当が支払われます。また、PERは、直観的には、「いま一株を購入したら、何年かかって一株当たり利益で回収できるか」ということになります。
PERの算出式
PERの算出式は以下の通りです。
PER = 一株当たり株価 ÷ 一株あたり当期純利益(EPS)
あるいは
PER = 時価総額 ÷ 当期純利益
EPSとは「Earning Per Share」の略で、当期純利益を発行済株式数で割ったものです。
EPSには、前期実績を用いる場合と当期予想(当期末の当期純利益を予想した数値)を用いる場合があります。投資では予想EPSを用いるのが一般的です。
では、例に用いてPERを計算してみましょう。
株式会社Aの株価(終値)は4000円、EPS(会社予想)が200円としましょう。では、このA社のPERは何倍となるでしょうか。
A社のPERの計算:4000÷200=20
A社のPERは20倍と計算できます。
PERは、当期純利益(最終利益)が内部留保されず、すべてが株主に配当されたとした場合に、どれぐらいの期間で株主が投資金額(株価)を回収することが出来るかを表していると考えることができます。また、現在の株価が何年先までの利益を含んでいるかを表しているという見方もできます。
PERのインターネットでの調べ方
では、実際にPERはどのように調べればよいのでしょうか。PERは最もよく利用される代表的な株価指標の一つであり、Yahoo!ファイナンスやインターネット証券会社の取引画面などから無料で簡単に調べることができます。
2PERの活用法【実践編】
では、実際に投資するにあたって、PERをどのように用いればよいのでしょうか。ここでは、PERの割高と割安の目安と使用上の注意点についてご説明します。
PERで割安か、割高かを判断する基準とは
一般的に、PERの倍率が低いほど株価は割安であり、高いほど割高であるとされています。
だいたい15倍を割高と割安の判断基準とすることが多いようですが、株式市場全体のPERは景気によって変化するため、絶対的な数値基準はありません。「株はPER15倍以下で買え」というようなメッセージを発信している人もいますが、やや言いすぎかなという気がしています。
では、割安か割高かの判断はどのようにすればよいのでしょうか。
主にPERの数値は同業他社やその会社の時系列で比較し、常に「相対的」に判断します。「PER何倍だから安い」というのは絶対的な基準で判断しているといえます。
業種で言えば、例えば、自動車や商社などは低PERの傾向がある一方で、ITやバイオ・医薬品などは高PERの傾向があります。業種によって平均PERは異なっており、株式市場全体から見れば低PERでも同業種間ではそうではない場合もあります。
また、個別の会社について言えば、利益成長率が高い企業のPERは高く、利益成長率が低い企業のPERは低くなります。仮に同じ業種でも会社の成長率によってPERは理論上変わります。
PERを使用する際の注意点
PERは1期のみの当期純利益を使用するため、その期の当期純利益が何らかの理由で実態と大きく乖離していると、あまり使い物になりません。
たとえば、たまたまその期に有価証券や不動産といった保有資産を売却したため、売却にともなう利益が大きくなり、当期純利益が大きくなり、結果として低PERになっていることがあります。こうしたイレギュラーな事象により一時的にその会社の通常のPER水準から数値が離れている場合があります。
低PERの銘柄を見つけたら
同業種間やその会社の時系列と比較した結果、低PERの銘柄(会社)会社が見つかったら、なぜその会社が低PERなのか、理由を考えてみましょう。
低PERの銘柄は、一般的に、人気がない(=株価が低い)という会社です。
しかし、低PERとなる理由としては、業績が悪化することが予想されていたり財務状況が悪かったりするなどで今後の業績に不安要素がある場合、また、自動車産業のように景気の影響を受けやすかったり、今後の成長性に投資家が疑問を持っている場合などがあります。
判断が難しいところもありますが、投資をする際にマイナス要因が隠されていないかどうか、注意して見てみるようにしてください。
高PERの会社とはどんな会社?
では、高PERとなる会社銘柄とはどのような会社なのでしょうか。
高PERの銘柄は、将来の成長率が高い銘柄が多いです。足元の利益規模はまだ小さいけれども、将来の成長性を投資家が認めている場合には、PERは高くなります。
将来、投資家の期待通りに利益成長した場合には、目先のPERは高かったが、後々振り返ってみると当時のPERは決して高くはなかったということがあります。
したがって、先ほども触れたように「PERが15倍以下の銘柄しか手を出すな」というアドバイスはおかしいということがお判りでしょう。
では、高PERの銘柄はどのように評価すればいいのかということになるのですが、一つ判断の目安となる指標に「PEGレシオ(Price to Earnings Ratio)」というものがあります。PEGレシオは「ペグレシオ」とも呼びます。
PEGは、PERを将来の年平均利益成長率(CAGR, Compound Annual Growth Rate)で割ったもので、低いほど割安、高いほど割安とされます。PEGレシオは、1~2倍が標準と考えられることが多いようです。
ただし、この成長率については、予想成長率を用いることが一般的ではあるものの、成長率の期間やどの項目(経常利益、EPS等)の成長率かなどの明確な定義はないため、状況によってどれを用いるのが適切かを考えて用いるようにしましょう。
3PBR(株価純資産倍率)との違いとは
ここまで、PERを見てきましたが、PBRとは何が異なるのでしょうか。ここでは簡単にPBRの定義や使い方を説明します。
PBRの計算式は以下の通りです。
PBR=一株当たり株価÷一株当たり純資産(BPS)
または
PBR=時価総額÷純資産
PBRは「Price Book-value Ratio」の略で、日本語では「株価純資産倍率」といいます。「ピービーアール」と発音します。
PBRを先ほどの株式会社A社のケースで考えてみます。A社の株価は2000円で、A社の一株当たり純資産が1000円とすると、PBRは何倍となるのでしょうか。
A社のPBR:2000円÷1000円=2倍
このようにA社のPBRは2倍となります。
では、PBRはどのように使用するのでしょうか。
PERは利益に対して株価が何倍となるかと見たものですが、PBRは純資産に対して何倍かを見たものです。
会計では、利益(ここでは当期純利益)はフロー、資産(ここでは純資産)はストックと呼ばれ、フローは流れているもの、ストックはたまっているものという意味になります。したがって、株価を比べる対象が異なっているというのは認識してください。
一般的に、PBRが1倍だと、株価と一株当たりの純資産が同じということで、それ以外の評価が株価に織り込まれていないことから、割高と割安の基準となり、PBRが1倍未満だと割安といわれることがあります。
ただし、PBRが1倍を下回っているからといって、単純に割安とは言い切れず、使用する際には注意が必要です。
【コラム】PBR=ROE×PERの関係からわかること
ここまで、PERについて解説してきましたが、PER単独ではなく他の指標と組み合わせるとより精緻に割安かを判断することができます。
以下の式は、代表的な株価指標であるROE(株主資本利益率)、PER、PBRの関係を表したものです。
PBR=ROE×PER
では、この式が成り立つかを見てみましょう。ROEとPERを以下のように変形していくと、PBRの式になります。
※ROE:Return On Equity、株主資本利益率
※EPS:Earnings Per Share、一株当たり当期純利益
※BPS:Book-value Per Share、一株当たり純資産
この式から、低PBRである場合、ROE×PERも低いことがわかります。したがって、ROEが比較以下、PERが低いか、両方が低いかとなります。
たとえば、低PERであって、PBRも低い(ROEが高い)場合は、本当に割安である可能性が高いです。一方、PBRが高い(ROEが低い)場合には、あまり利益が期待できないことが予想され、決して割安とは言えません。
このように、他の株価指標との関係を用いると、より精度の高い判断が可能になります。
4銘柄の情報は新聞記事などで知識を補強しよう
これまで見てきたとおり、PERは株価の割高、割安を見るうえで非常に重要視される指標だといえます。
たとえば、日本経済新聞(日経新聞)にも株式市場のPBRとともにPERが掲載されています。
PERをうまく使うには、ここまで述べてきたように、各会社が置かれている状況を理解しながら判断する必要があります。日ごろから新聞記事などで情報収集をして知識を蓄積していくことが重要です。
たとえば、日経新聞電子版の記事は月数本程度しか無料で読めません。投資家として情報取集に使い始めるといささか心もとなく感じます。しかし、顧客サービスの一環として情報提供サービスを行っているネット証券もあるので、活用すれば情報取集を非常に効率よく行うことができます。
5まとめ
PERは最もよく使われる重要な株価指標の一つですが、PERの数値が高いか低いかだけで一概に株価が割安・割高であるとは言い切れません。より精緻で実態になるべく近い判断をするには、これだけではなくPBRなどいくつかを見た上で総合的に判断するようにしましょう。