

次の仕事が決まってから辞めるべき?転職先決定後の退職手順と注意点を徹底解説
「次の仕事が決まってから辞めるべき?」
「次の仕事は決まってないけれど、今すぐ辞めても大丈夫?」
といったお悩みはありませんか?
転職先を確保してから退職することは、経済的・精神的な安定を得られる一方で、在職中の転職活動や退職交渉には特有の難しさがあります。
この記事を読めば、転職先が決まってから退職するまでの具体的な手順や、円満退職するためのポイントがすべてわかります。
以下の内容についてご紹介します。
- 次の仕事が決まってから辞めるメリット・デメリット
- 転職先決定後の具体的な退職手順5ステップ
- 円満退職を実現するための伝え方と心構え
スムーズな退職と次のキャリアへの移行を成功させるため、転職エージェントの活用も検討してみましょう。
1次の仕事決まってから辞めるメリット5選

次の仕事が決まってから退職する最大のメリットは、収入が途絶えることなく、精神的・経済的な安定を保ったまま次のステップに進める点です。これにより、焦らずに転職活動や退職準備を進められ、キャリアに空白期間が生まれるのを防げます。
1-1【メリット1】収入が途切れず生活が安定する
転職先を確保してから現在の職場を辞める最大の利点は、経済的な安定を維持できることです。在職中に転職活動を行うことで、給与が途切れる期間が発生しません。これにより、家賃や公共料金の支払いといった日々の生活費に困窮するリスクを回避できます。
収入が途絶えないことは、精神的な安定にも直結します。金銭的な不安から「早く次の仕事を見つけなければ」と焦ってしまい、本来の希望とは異なる条件の企業に妥協してしまうといった判断ミスを防ぐことができます。
1-2【メリット2】精神的な余裕を持って退職できる
次の職場が保証されているという事実は、大きな精神的な支えとなります。収入が途絶える心配がないため、金銭的なプレッシャーから解放され、落ち着いて退職準備を進めることが可能です。
また、「次が決まっている」という事実は、上司や同僚に退職理由を説明する際にも有利に働きます。キャリアアップなど前向きな理由として伝えやすいため、不要な詮索や強い引き止めを避けやすく、円満退職に向けた交渉がスムーズに進む傾向があります。
1-3【メリット3】転職活動で焦らず条件交渉できる
現職からの収入があるため、転職活動において「早く決めなければ」という焦りが生まれません。これにより、複数の内定先をじっくり比較検討し、自身のキャリアプランや希望条件に最も合致する一社を冷静に見極めることができます。
経済的な余裕は、採用面接での交渉力にもつながります。給与や待遇、役職といった条件面で安易に妥協することなく、自身のスキルや経験に見合った条件を主張しやすくなります。結果として、満足度の高い転職を実現できる可能性が高まります。
1-4【メリット4】失業保険の給付制限を気にしなくて済む
転職先がすでに決まっている場合、退職から入社までの間に空白期間が生じても、失業保険(雇用保険の基本手当)を受給することはできません。これは、失業保険が「失業状態にある人」の生活を支援するための制度だからです。
しかし、これはデメリットではなく、むしろメリットと捉えることができます。自己都合で退職した場合、失業保険を受け取るまでには一定の給付制限期間(待機期間)が存在します。次の仕事が決まっていれば、この期間の収入を心配する必要がなく、スムーズに次のキャリアへ移行できるのです。
1-5【メリット5】職務経歴書の空白期間が生まれない
在職中に転職活動を行い、退職後すぐに入社することで、職務経歴書に空白期間(ブランク)が生じるのを防げます。キャリアに一貫性があることは、採用担当者に対して計画性や安定性をアピールする上で有利に働きます。
採用面接では、空白期間について「何をしていたのか」「なぜすぐに就職しなかったのか」といった質問をされることが少なくありません。ブランクがないことで、こうした質問に回答する必要がなくなり、自身のスキルや入社意欲といった前向きなアピールに時間を集中させることができます。
2次の仕事が決まってから辞めるデメリット3選

転職先が決まってから辞める場合、在職中の転職活動となるため時間確保が難しく、入社日や引き継ぎの調整が複雑になる点がデメリットです。また、退職交渉が難航した場合、転職先に迷惑をかけてしまうリスクも考慮する必要があります。
2-1【デメリット1】転職活動の時間確保が難しい
在職しながらの転職活動は、現在の業務と並行して進める必要があります。そのため、企業研究や応募書類の作成、面接対策といった活動に充てる時間を確保するのが大きな課題となります。
特に、平日の日中に行われることが多い面接の日程調整は困難を極めます。有給休暇をうまく活用する必要がありますが、頻繁に休みを取るのが難しい職場環境の場合、応募できる企業の選択肢が狭まってしまう可能性も否定できません。
2-2【デメリット2】入社日の調整で転職先に迷惑をかける可能性がある
内定が出た後、現職の退職交渉が想定通りに進まないケースは少なくありません。例えば、強い引き止めにあったり、後任者の決定や引き継ぎに時間がかかったりすることで、当初予定していた退職日を延期せざるを得ない状況になることがあります。
その結果、転職先と合意した入社日を変更してもらう必要が生じます。転職先はあなたを受け入れるために人員計画や研修スケジュールを組んでいるため、入社日の変更は多大な迷惑をかける行為です。最悪の場合、内定取り消しに繋がるリスクもゼロではないことを理解しておく必要があります。
2-3【デメリット3】有給消化と引き継ぎのスケジュール調整が複雑になる
退職日と入社日が決まると、限られた期間内に業務の引き継ぎを完了させ、残っている有給休暇を消化する必要があります。この二つのスケジュール調整は非常に複雑になりがちです。
特に、後任者がすぐに決まらない場合や、引き継ぐ業務が多岐にわたる場合は、十分な引き継ぎ期間を確保することが難しくなります。有給休暇の消化を優先すれば引き継ぎが不十分になり、逆に引き継ぎを完璧にしようとすると有給休暇を使いきれないというジレンマに陥る可能性があります。円満退職のためには、計画的なスケジュール管理が不可欠です。
3次を決めずに退職するメリット3選

次を決めずに退職するメリットは、転職活動に集中できる時間を確保でき、心身をリフレッシュさせる期間を設けられる点にあります。これにより、キャリアをじっくり見つめ直したり、新たなスキル習得に挑戦したりする余裕が生まれます。
3-1【メリット1】転職活動に集中できる時間が確保できる
先に退職する最大のメリットは、転職活動に十分な時間を充てられることです。在職中のように現在の業務に追われることがないため、自己分析や企業研究、業界研究にじっくりと取り組むことができます。
また、平日の日中に実施されることが多い企業の面接にも、日程調整の負担なく柔軟に対応できます。これにより、応募できる企業の選択肢が広がり、急募の求人にも迅速に応募することが可能です。万全の準備で選考に臨めるため、内定獲得の可能性も高まるでしょう。
3-2【メリット2】心身のリフレッシュ期間を取れる
現在の職場環境に強いストレスを感じている場合、先に退職することで心と体を休ませるリフレッシュ期間を確保できます。過度なプレッシャーや長時間労働から解放されることで、精神的な余裕を取り戻すことが可能です。
心身が健康な状態であれば、自身のキャリアについて冷静かつ前向きに考えることができます。「何のために働くのか」「どんな環境で働きたいのか」といった本質的な問いと向き合うことで、次の転職で同じ失敗を繰り返すリスクを減らせます。
3-3【メリット3】キャリアチェンジや資格取得の時間が作れる
退職によって生まれた自由な時間は、キャリアチェンジに向けた学習や、市場価値を高めるための資格取得に集中できる貴重な機会となります。これまで興味があったものの、時間がなくて挑戦できなかった分野の勉強を始める絶好のタイミングです。
例えば、プログラミングスクールに通ったり、語学留学をしたりと、自己投資に時間を費やすことができます。こうしたスキルアップは、転職活動において大きなアピールポイントとなり、未経験の職種へ挑戦する際の強力な武器になるでしょう。
4次を決めずに退職するデメリット4選

次を決めずに退職すると、収入が途絶える経済的な不安が大きく、転職活動が長引くと経歴の空白期間が採用で不利になる可能性があります。また、焦りから妥協した転職をしてしまうリスクや、失業保険の給付開始まで時間がかかる点もデメリットです。
4-1【デメリット1】収入が途絶え経済的な不安が大きい
次を決めずに退職する最大のデメリットは、収入が完全に途絶えることによる経済的な不安です。失業保険を受給できたとしても、給与の満額が支給されるわけではなく、また自己都合退職の場合は給付開始までに1カ月間の制限期間があります。
貯蓄が十分にない場合、生活費の支払いに追われ、精神的なプレッシャーが大きくなります。この経済的な焦りが、後の転職活動において冷静な判断を妨げる大きな要因となり得ます。
4-2【デメリット2】転職活動で焦りが生じ妥協しやすくなる
収入がない状態が続くと、「早く就職しなければ」という焦りが生まれやすくなります。この焦りは、転職活動において冷静な判断を妨げる大きな要因です。
その結果、企業の労働条件や社風を十分に吟味せず、内定が出た企業に安易に飛びついてしまい、再び職場とのミスマッチに悩むことになりかねません。自分に合わない職場を選んでしまうと、またもや早期離職に至る可能性が高まり、キャリアに悪影響を及ぼす悪循環に陥るリスクがあります。
4-3【デメリット3】空白期間が長引くと採用で不利になる
転職活動が長引き、職歴に数カ月以上の空白期間(ブランク)ができてしまうと、採用選考で不利に働く可能性があります。採用担当者は、空白期間が長い応募者に対して「計画性がないのでは」「働く意欲が低いのでは」といった懸念を抱きやすいからです。
面接では、空白期間の理由について合理的な説明が求められます。スキルアップや資格取得など、明確な目的を持って過ごしていたことを具体的に説明できなければ、マイナスの印象を与えてしまうリスクがあります。
4-4【デメリット4】失業保険の給付開始まで時間がかかる
退職後に頼れる制度の一つである失業保険(雇用保険の基本手当)ですが、自己都合で退職した場合、すぐには給付を受けられません。申請手続き後、7日間の待機期間に加えて、原則として1カ月間の給付制限期間が設けられています。
つまり、実際に手当が振り込まれるのは退職してから1カ月以上先となり、それまでの生活費は貯蓄などで賄う必要があります。この給付開始までのタイムラグを考慮せずに退職すると、経済的に困窮するリスクが高まります。
5転職先が決まってから退職する手順5ステップ

転職先が決まってから円満に退職するには、内定承諾後に上司へ意思を伝え、退職日を調整後、引き継ぎと有給消化を計画的に進める手順が重要です。各ステップを丁寧に進めることで、現職・転職先の双方に迷惑をかけることなく、スムーズな移行が可能になります。
5-1【手順1】内定承諾後、現職の上司に退職意思を伝える
転職先から正式な内定通知を受け、入社を承諾したら、最初に直属の上司に退職の意思を伝えましょう。同僚や他部署の社員から上司の耳に入るのは、管理能力を問われることにもなりかねず、円満退職の妨げになります。
伝える際は、業務時間中の忙しい時間帯を避け、「ご相談したいことがあります」と事前にアポイントを取り、会議室など他の人に聞かれない個室で1対1で話すのがマナーです。退職の意思は曖昧な表現を避け、「〇月〇日付けで退職したいと考えています」と明確に伝えましょう。
5-2【手順2】退職日と転職先の入社日を調整する
上司に退職の意思を伝えたら、具体的な退職日を交渉します。この際、会社の就業規則を確認し、定められた期間(通常1~3カ月前)を守ることが円満退職の基本です。法律上は2週間前の申し出で退職できますが、引き継ぎなどを考慮すると現実的ではありません。
退職日が確定したら、その日程を速やかに転職先に連絡し、入社日を最終決定します。現職の都合で退職日が延びそうな場合は、正直に転職先に事情を説明し、入社日の調整が可能か相談しましょう。一方的な日程変更は避け、双方と誠実に調整することが重要です。
5-3【手順3】退職届を提出し正式に退職手続きを開始する
上司との話し合いで退職日が合意に至ったら、会社の規定に従って「退職届」を提出します。退職届は、退職の意思を正式に表明する重要な書類です。提出先は直属の上司か、人事部かなど、社内ルールを事前に確認しておきましょう。
退職届と似た書類に「退職願」がありますが、これは「退職したい」と願い出る書類であり、会社が承諾するまでは撤回が可能です。一方、退職届は受理されると原則として撤回できません。退職の意思が固まっている場合は、退職届を提出するのが一般的です。
5-4【手順4】業務の引き継ぎを計画的に進める
退職日までに、自身が担当していた業務を後任者へ引き継ぐことは、社会人としての重要な責務です。引き継ぎが不十分だと、退職後に会社や取引先に迷惑をかけるだけでなく、あなた自身の評判にも影響しかねません。
まずは引き継ぎ事項をリストアップし、上司と相談しながらスケジュールを立てましょう。後任者が決まっていない場合でも、業務内容をわかりやすく説明した引継書やマニュアルを作成しておくことが大切です。口頭での説明だけでなく、資料として残すことで、業務を後任者へ円滑に移行できるようにしておきましょう。
5-5【手順5】有給休暇を消化し退職日を迎える
業務の引き継ぎにメドが立ったら、残っている有給休暇を消化します。有給休暇の取得は労働者の権利ですが、円満退職のためには、引き継ぎスケジュールと調整しながら計画的に取得することが望ましいです。
最終出勤日には、お世話になった上司や同僚、関連部署へ挨拶回りをしましょう。社内に持ち込んだ私物は計画的に持ち帰り、社員証や名刺、制服といった会社からの貸与物はすべて返却します。最後まで責任ある行動を心がけることで、良好な関係を保ったまま退職日を迎えられます。
6退職を伝えるタイミングと伝え方のポイント3選

円満退職のためには、退職を伝えるタイミングと伝え方が極めて重要です。退職希望日の1~3カ月前に直属の上司へ口頭で伝えるのが基本です。引き止めに備え、退職理由は明確にしておき、感謝の気持ちとともに誠実な態度で臨みましょう。
6-1【ポイント1】退職の1~3カ月前に直属の上司に口頭で伝える
退職の意思を伝える最適なタイミングは、会社の就業規則で定められた期間(一般的には1~3カ月前)に従うのが基本です。法律上は2週間前でも可能ですが、業務の引き継ぎや後任者の手配などを考慮すると、十分な期間を設けるのが社会人としてのマナーです。
伝える相手は、必ず直属の上司にしましょう。同僚や人事部に先に話すのは、上司の顔を潰すことになり、関係性を損なう原因となります。事前に「ご相談があります」とアポイントを取り、会議室などの個室で直接、口頭で伝えるのが最も丁寧な方法です。
6-2【ポイント2】転職先が決まっていることは伝えるが社名は慎重に
退職交渉をスムーズに進めるために、転職先がすでに決まっている事実は伝えた方が効果的です。「次のキャリアが決まっている」と伝えることで、退職の意思が固いことを示し、強い引き止めを回避しやすくなります。
ただし、具体的な転職先の社名を伝える必要はありません。特に同業他社への転職の場合、思わぬトラブルに発展する可能性もゼロではありません。「どのような業界か」程度に留めておくのが賢明です。もし執拗に聞かれた場合でも、「先方との約束で、入社前にお伝えすることは控えています」と丁寧に断りましょう。
6-3【ポイント3】引き止めに備え退職理由を明確にしておく
退職を伝えると、上司から引き止められる可能性は十分に考えられます。その際に曖昧な態度を取ると、交渉の余地があると捉えられ、退職交渉が長引く原因になります。引き止めにあっても退職の意思が変わらないことを、毅然とした態度で伝えましょう。
退職理由は、会社の不平不満を述べるのは避けるべきです。「給与が低い」「人間関係が悪い」といったネガティブな理由を伝えると、「改善するから残ってほしい」と引き止めの口実を与えてしまいます。
「〇〇という分野で専門性を高めたい」「現職では経験できない業務に挑戦したい」など、その会社では実現できない、前向きで個人的な理由を伝えるのが最も効果的です。感謝の気持ちを述べつつ、自分のキャリアプランに基づいた決断であることを誠実に説明しましょう。
7転職先の入社日調整で注意すべきポイント3選

転職先の入社日は、現職の就業規則や引き継ぎ期間を考慮して設定することが不可欠です。一方的な日程ではなく、現職・転職先の双方と誠実に調整し、無理のないスケジュールを組むことが、トラブルを避ける鍵となります。
7-1【注意点1】現職の退職日から逆算して入社日を設定する
転職先から内定をもらうと、入社希望日を聞かれます。このとき、安易に早い日程を伝えるのは禁物です。まずは現職の就業規則を確認し、退職の申し出が何カ月前に必要かを確認しましょう。
その上で、業務の引き継ぎにかかる期間や、残っている有給休暇の消化日数を考慮して、現実的な退職可能日を算出します。その退職日から逆算して、無理のない入社日を転職先に提案することが重要です。これにより、現職に迷惑をかけることなく、スムーズな退職が可能になります。
7-2【注意点2】有給消化期間を考慮した余裕のあるスケジュールを組む
退職日までに残っている有給休暇をすべて消化することは、労働者の権利です。しかし、引き継ぎ期間と有給消化期間が重なると、スケジュールが非常にタイトになります。
引き継ぎに必要な期間を現実的に見積もり、その後に有給休暇を消化する期間を設けるのが理想的です。例えば、引き継ぎに1カ月、有給消化に2週間かかるのであれば、退職の申し出から退職日まで最低でも1カ月半の期間が必要になります。この期間を考慮せずに短い入社日を伝えてしまうと、有給を消化しきれなかったり、引き継ぎが不十分になったりする可能性があります。
7-3【注意点3】転職先に事情を説明し柔軟な対応を依頼する
現職の退職交渉が難航し、どうしても当初予定していた入社日に間に合わない場合は、正直に事情を転職先に説明し、入社日の延期を相談しましょう。
その際、ただ「遅れます」と伝えるのではなく、「引き継ぎに想定以上の時間がかかっており、責任を持って完了させるために〇〇日まで時間をいただきたい」といったように、具体的な理由と希望する新しい入社日を誠実に伝えることが重要です。
無断で遅れたり、直前になって連絡したりするのは絶対に避けるべきです。早めに相談することで、転職先も調整がしやすくなり、あなたの誠実な対応を評価してくれる可能性があります。
8退職時に必要な手続きと書類5選

退職時には、退職届の提出、健康保険証の返却に加え、離職票や源泉徴収票など転職先で必要となる重要書類を確実に受け取ることが重要です。これらの手続きを漏れなく行うことで、スムーズな転職と社会保険の切り替えが可能になります。
8-1【必要な手続き1】退職届の提出
退職の意思が固まり、会社との間で退職日が合意されたら、正式な書類として「退職届」を提出します。これは、退職するという確定的な意思表示をするための書類です。会社の規定フォーマットがあるかを確認し、なければ自身で作成します。提出先は直属の上司または人事部が一般的です。一度提出すると原則として撤回はできないため、最終的な意思表示として慎重に行いましょう。
8-2【必要な手続き2】健康保険証の返却
退職日をもって、会社の健康保険の被保険者資格を喪失します。そのため、退職日当日またはそれ以降速やかに、本人および扶養家族分の健康保険被保険者証を会社に返却する必要があります。
退職日の翌日から転職先に入社する場合は、新しい会社の健康保険に加入します。もし入社までに期間が空く場合は、国民健康保険への加入手続きを自身で行うか、家族の扶養に入る、または元の健康保険を任意継続するといった選択肢があります。保険証がない期間に医療機関にかかると全額自己負担となるため、切れ目なく保険に加入できるよう手続きを進めましょう。
8-3【必要な手続き3】離職票・源泉徴収票の受け取り
退職後、会社から受け取るべき重要な書類が「離職票」と「源泉徴収票」です。
源泉徴収票は、その年に会社から支払われた給与総額と、納めた所得税額が記載された書類です。転職先の会社で年末調整を行う際に必ず必要となるため、受け取ったら大切に保管しましょう。
離職票は、失業保険の給付を申請する際に必要となる書類です。転職先がすでに決まっている場合は原則不要ですが、万が一、転職先をすぐに辞めてしまう可能性に備え、念のため発行を依頼しておくことをおすすめします。離職票は退職後に会社から郵送されるのが一般的です。
8-4【必要な手続き4】年金手帳・雇用保険被保険者証の確認
「年金手帳」と「雇用保険被保険者証」は、転職先の会社で社会保険や雇用保険の加入手続きを行う際に必要となる重要な書類です。
これらの書類は、入社時に会社に預け、そのまま会社が保管しているケースが多くあります。その場合は、退職時に必ず返却してもらいましょう。もし自身で保管している場合は、転職先に提出できるよう、どこにあるかを確認しておいてください。万が一紛失した場合は、再発行の手続きが必要になります。
8-5【必要な手続き5】会社の貸与品の返却
退職日までに、会社から貸与されている物品はすべて返却する必要があります。返却漏れがあると、後日会社から連絡が来たり、場合によってはトラブルに発展したりする可能性もあります。
主な貸与品としては、以下のようなものが挙げられます。
- 社員証、入館証
- 名刺(自身のもの、受け取ったもの)
- 制服、作業着
- 業務用PC、スマートフォン
- 通勤定期券
- 業務に関する書類やデータ
最終出勤日に慌てないよう、事前にリストアップし、計画的に整理・返却準備を進めておきましょう。
9有給休暇を消化するための交渉術3選

有給休暇を確実に消化するには、引き継ぎ計画と合わせて消化期間を明確に提示し、会社の繁忙期を避けるなど配慮を示す交渉が有効です。権利を主張するだけでなく、会社の状況を考慮した提案をすることで、円満な合意形成を目指しましょう。
9-1【交渉術1】退職日から逆算して有給消化期間を明示する
有給休暇の消化を交渉する際は、まず自身の残日数を確認し、退職日から逆算して具体的な消化期間を算出します。その上で、「〇月〇日から〇月〇日まで、残りの有給休暇を取得したいと考えています」と、明確なスケジュールを上司に提示しましょう。
漠然と「有給を消化したい」と伝えるのではなく、具体的な日程を示すことで、会社側も人員配置の調整がしやすくなります。引き継ぎ期間と消化期間を分けたスケジュールを提示することで、業務への支障がないことを示せば、より理解を得やすくなります。
9-2【交渉術2】引き継ぎ完了後の消化を提案し会社の理解を得る
会社側が有給消化に難色を示す最大の理由は、業務の停滞や引き継ぎへの支障を懸念するためです。そこで、「業務の引き継ぎは〇月〇日までに責任を持って完了させます。その後、最終出勤日までの期間で有給休暇を取得できますか」と提案するのが有効です。
この伝え方であれば、業務への責任を全うする姿勢を示しつつ、権利である有給休暇を取得したいという意思を伝えられます。引き継ぎを完璧に行うことを約束することで、会社側の不安を払拭し、交渉をスムーズに進めることができます。
9-3【交渉術3】繁忙期を避けたスケジュールを提示する
退職日や有給消化期間を設定する際には、会社の繁忙期を避ける配慮を示すことも円満な交渉のポイントです。業界や部署の年間スケジュールを考慮し、比較的業務が落ち着いている時期に退職日を設定することで、「会社のことを考えてくれている」という印象を与えられます。
「繁忙期である〇月を避け、〇月での退職を考えています」といったように、会社への配慮を言葉にして伝えることで、上司もあなたの申し出を受け入れやすくなります。一方的に権利を主張するのではなく、譲歩の姿勢を見せることが、良好な関係を保ったまま退職するための鍵となります。
10円満退職を実現するための心構え3選

円満退職の鍵は、感謝の気持ちを忘れず最後まで誠実に対応することです。丁寧な引き継ぎ資料の作成や、後任者へのサポート、そして退職後も良好な関係を維持しようと配慮する姿勢が、あなたの社会人としての評価を高めます。
10-1【心構え1】感謝の気持ちを忘れず最後まで誠実に対応する
たとえ退職理由がネガティブなものであっても、これまでお世話になった会社や上司、同僚への感謝の気持ちを忘れないことが円満退職の第一歩です。退職を伝える際には、「これまでご指導いただき、ありがとうございました」といった感謝の言葉を添えましょう。
最終出勤日まで、気を抜かずに自身の業務に責任を持つ姿勢も重要です。「どうせ辞めるから」と投げやりな態度を取ることは、これまで築いてきた信頼関係を損なう行為です。最後まで誠実に対応することで、退職後も良好な関係を維持できる可能性が高まります。
10-2【心構え2】引き継ぎ資料を丁寧に作成し後任者をサポートする
円満退職を実現するためには、丁寧な業務の引き継ぎが不可欠です。後任者がスムーズに業務を開始できるよう、詳細を記載した分かりやすい引き継ぎ資料を作成しましょう。
資料には、業務の手順だけでなく、担当している顧客情報、過去の経緯、注意点などを具体的に記載します。可能であれば、後任者と同行して顧客への挨拶回りを行うなど、直接サポートする機会を設けるのが理想です。あなたの退職による業務への影響を最小限に抑える努力が、会社からの信頼につながります。
10-3【心構え3】退職後も良好な関係を維持できるよう配慮する
退職は、その会社との関係が完全に終わることを意味するわけではありません。特に同じ業界内で転職する場合、将来的に仕事で関わる可能性も十分に考えられます。そのため、退職後も良好な関係を維持できるよう配慮することが大切です。
最終出勤日の挨拶回りや、お世話になった取引先への挨拶状の送付など、最後まで丁寧な対応を心がけましょう。また、退職後に会社の内部情報や元同僚の悪口などを口外することは、社会人としての信頼を失う行為であり、絶対に避けるべきです。立つ鳥跡を濁さずの精神が、あなたの未来のキャリアを守ることに繋がります。
1120代・30代・40代別の退職判断のポイント

退職の判断は年代ごとにリスクが異なります。20代はポテンシャル採用の機会が多く再挑戦しやすい一方、30代以降は家庭や住宅ローンの負担といったライフステージの変化、そして転職市場での即戦力としての期待値を考慮した、より慎重な判断が求められます。
11-1【20代の方】次を決めずに退職してもリカバリーしやすい年代
20代は、キャリアにおけるポテンシャルが重視される年代です。そのため、万が一転職に失敗したり、次を決めずに退職したりしても、比較的リカバリーしやすいと言えます。未経験の職種や業界へのキャリアチェンジにも挑戦しやすく、企業側も若さや柔軟性を評価してくれる傾向にあります。
ただし、計画性のない短期離職を繰り返すと、後の転職活動で不利になる可能性もあります。次を決めずに退職する場合は、スキルアップや資格取得など、空白期間を有効に活用する明確な目的を持つことが重要です。
11-2【30代の方】家族や生活費を考慮し慎重な判断が必要
30代になると、結婚や子育て、住宅ローンの負担など、ライフステージの変化に伴い背負う責任が大きくなる方が増えます。そのため、次を決めずに退職することは、20代に比べて経済的なリスクが格段に高まります。
転職市場では、ポテンシャルよりも即戦力となる実績や専門スキルが求められるようになります。安易に退職すると、収入が途絶えるだけでなく、希望する条件での再就職が難しくなる可能性も考慮しなければなりません。家族と将来について十分に話し合い、しっかりとした資金計画を立てた上で、慎重に判断することが不可欠です。
11-3【40代の方】転職市場の厳しさを踏まえ次を決めてから辞めるべき
40代での転職は、マネジメント経験や高度な専門性が求められるため、20代・30代に比べて求人の選択肢が限られるのが現実です。そのため、次を決めずに退職することは非常に高いリスクを伴います。
この年代での空白期間は、キャリアプランにおける大きなマイナス評価につながりかねません。また、年齢的に収入のダウンも許容しづらくなるため、経済的な基盤を揺るがす事態は絶対に避けるべきです。
よほどの事情がない限り、在職中に転職活動を行い、次の職場を確実に確保してから退職する「転職先決定後の退職」が唯一の選択肢と考えるべきでしょう。
12まとめ
転職先が決まってからの退職は、収入やキャリアの空白期間を防ぎ、精神的な安定を保てる大きなメリットがあります。一方で、在職中の転職活動は時間的な制約が多く、入社日の調整や引き継ぎといった課題も伴います。
円満退職を実現するためには、就業規則を確認し、退職希望日の1~3カ月前には直属の上司に相談することが重要です。その際、感謝の気持ちを伝え、引き継ぎを責任を持って行う誠実な姿勢が、良好な関係を維持する鍵となります。
特に30代以降は、経済的・社会的なリスクを考慮し、次を決めずに退職することは慎重に判断すべきです。この記事で解説した手順とポイントを参考に、ご自身の状況に合った最善の選択をしてください。
13よくある質問
転職先が決まってからの退職に関する疑問は多岐にわたります。適切な期間や引き止めへの対応、失業保険の受給条件などを正しく理解しておくことで、不安を解消し、スムーズな退職につなげることができます。ここでは、特に多く寄せられる質問について簡潔にお答えします。
転職先が決まってから退職するまでの期間はどのくらいが適切ですか?
一般的に、退職の意思表示から退職日までは1〜3カ月が目安です。法律上は2週間前の申し出で可能ですが、円満退職のためには、業務の引き継ぎ期間を十分に考慮し、会社の就業規則に従うことが重要です。転職先と相談の上、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
退職を伝えたら引き止められた場合どう対応すればいいですか?
強い引き止めにあった場合は、まず上司の話を丁寧に聞いたうえで、退職の意思が固いことを毅然とした態度で伝えましょう。感情的にならず、「自分のキャリアプランを考えた上での決断です」と、前向きな理由を改めて説明するのが効果的です。待遇改善などを提案されても、安易に受け入れず、決意が変わらないことを示しましょう。
次の仕事が決まっていることを現職に伝えるべきですか?
伝えることをおすすめします。「次の職場が決まっている」と伝えることで、退職の意思が固いことを明確に示せ、強い引き止めを回避しやすくなります。ただし、具体的な企業名を伝える義務はありません。同業他社への転職など、トラブルを避けたい場合は「同じ業界です」といった程度に留めておくのが賢明です。
転職先の入社日を延期してもらうことは可能ですか?
やむを得ない事情がある場合は可能ですが、転職先に多大な迷惑をかける行為であることを理解する必要があります。退職交渉が難航した場合など、どうしても調整が必要な際は、できるだけ早く、正直に事情を説明して相談しましょう。一方的な連絡ではなく、誠意ある対応を心がけることが重要です。
次を決めずに退職した場合、失業保険はいつから受給できますか?
自己都合で退職した場合、ハローワークでの手続き後、7日間の待機期間を経て、さらに原則1カ月間の給付制限期間があります。そのため、実際に失業保険が振り込まれるのは、退職してから1カ月以上後となります。ただし、会社の倒産や解雇など、正当な理由がある場合は給付制限期間が短縮されることがあります。











